何もしていないのに汗をかきやすく、体がほてるような感じがします
- Q.
- 何もしていないのに汗をかきやすく、体がほてるような感じがします(50代/女性)
- A.
理由が分からない汗やほてりは落ち着かないですよね。いつ、どこに、どんなふうに汗が出るのかで原因と対策が変わってきますのですこし整理しながらお伝えしたいと思います。
顔や首、胸のあたりが急にカーッと熱くなり、数分で引いていくタイプなら、更年期にみられるホットフラッシュの可能性が高いです。女性ホルモンのエストロゲンが減ると、体温を調節する脳のスイッチが敏感になり、血管が一気に広がって熱感や発汗が出ます。睡眠が浅くなる、集中しにくいといった日常の困りごとにつながることもあります。生活調整で和らぐ方も多く、必要に応じてホルモン補充療法で改善が期待できます。
一方、夜間や明け方にシーツが濡れるほどの寝汗が続く場合は、更年期だけで説明できないことがあります。結核などの感染症、夜間の低血糖、睡眠時無呼吸など、全身の病気が隠れていないかを確認します。体重が減ってきた、咳が長引く、強いだるさがある、といった情報は大事な手がかりになります。
日中ずっと暑くないのに全身がベタつく、鼓動が速い、手が震える、体重が落ちるといったサインがあれば、甲状腺ホルモンが出すぎている可能性があります。緊張や不安で汗が増える原発性多汗症もありますが、甲状腺の検査で区別できます。発作的に動悸が強くなり、手の震えや不安とともに大汗が出る場合は、低血糖やカフェイン、薬の影響や、まれに副腎の腫瘍が関わることもあります。
頭痛や血圧の急上昇、顔のほてりが繰り返し起こるなら、内分泌の専門評価が必要です。手のひら、足、わきのように限られた部位だけの多汗は、思春期以降にみられる局所多汗症のことがあり、外用剤や機器治療、注射など選べる治療があります。
このように、体温のスイッチは脳の視床下部にあり、ホルモン、血糖、ストレス、感染などのさまざまな影響を受けます。女性ホルモンのエストロゲンが減るとスイッチが誤作動しやすくなり、熱くないのに汗が出ます。ストレスが続いて自律神経が乱れると、汗腺が過剰に反応します。甲状腺の異常や感染、薬の作用はこの回路を直接刺激して、汗やほてりを強めます。
よくある原因としては更年期障害、甲状腺機能亢進症、原発性多汗症、薬によるものが挙げられます。一方で見逃したくない原因として、結核やHIVなどの感染、低血糖発作、褐色細胞腫、カルチノイド症候群、睡眠時無呼吸があります。体重減少や発熱、強い動悸、夜間の発作が重なるときは、医療機関での精査をおすすめします。受診の目安としては、二週間以上続く寝汗、発作的な大汗に頭痛や動悸や高血圧が伴うとき、暑がりや手の震え、体重減少が気になるとき、生活を整えても四週間以上改善しないときは、医療機関の受診がお勧めです。内分泌、感染症、婦人科など、状況に合った診療科につなげます。
また、今日からできる工夫もあります。寝室は過ごしやすい温度に保ち、通気のよい寝具を選びます。アルコールやカフェインは控えめにし、日中に軽い運動を取り入れて睡眠の質を整えます。汗が気になるときは、通気性と吸湿性のある衣類を選びましょう、TPOも考えて必要に応じてデオドラントを使っていただいても結構です。エアコンの風が体に直接当たらないようにし、こまめな水分補給を心がけましょう。抗うつ薬など、汗に影響する可能性のある薬を使っている方は、自己判断で中止せず、担当医と相談して調整します。
医療機関では、まず発汗の起こる時間帯や誘因、睡眠の状況、服薬歴をうかがいます。採血で甲状腺ホルモンや血糖、炎症反応などを確認することがあります。これは必要に応じて胸部レントゲンや心電図で別の病気を除外するためです。いびきや日中の眠気があれば、専門の医療機関で睡眠時無呼吸の簡易検査を行うこともあります。原因が分かれば、更年期の治療、甲状腺の治療、多汗症の治療などを段階的に選んでいきます。原因が重なっていることもあるので、複数の施設で治療連携をすることもありますが、生活の工夫と医療のサポートを合わせて、あなたに合う形を一緒に整えてゆくことは悪いことではないと思いませんか?
汗やほてりは、体からの大切な”助けて”のサインかもしれません。年齢だから、更年期だから、病気だからと我慢しすぎず、持続する、夜間に強い、発作的に起こる、のどれか一つでも当てはまる場合や、気になるときは一人で抱え込まずまず周りに相談してください。毎日の暮らしを無理のない方法で整えていきましょう。
啓和会は、医療と介護の融合で皆さんの暮らしを支えてゆきます。汗やほてりに関しても専門家や総合病院と連携しながら一緒に考え、対応することができるます。気になる症状や暮らしの中の困ったをぜひご相談にいらしてください。
【参考】
1.練馬区. 女性と男性の更年期(練馬区, 2025)
女性と男性の更年期 :練馬区公式ホームページ
2.World Health Organization. Menopose (WHO, 2024).
Menopause
3.The Menopause Society (NAMS). Position Statement: Treatment of Vasomotor Symptoms (2023).
https://menopause.org/patient-education
4.International Hyperhidrosis Society. Hyperhidrosis Treatment Guide (2021).
https://www.sweathelp.org
5.Mayo Clinic. Night Sweats – Causes (2023).
Night sweats – Mayo Clinic